ドビュッシーの《海》は神奈川の海?
『鶴見オクトーバーコンサート』特設サイトをご覧の皆様、はじめまして。今回ピアノ伴奏を務める畠山正成(はたけやま・まさなり)です。
今回、このような企画を実現することができ大変嬉しく思っています。いつも演奏している仲間、初めての共演となる演奏家、それぞれどのような演奏となるのか、私自身とても楽しみにしています。
さて、今日は私たちが演奏を予定している曲目の中から、クロード・ドビュッシー(1862〜1918)の作品について少しご紹介したいと思います。
19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍していた芸術家たちは、ヨーロッパで積み上げられてきた伝統的書法の先行きを案じつつ、行き詰まりを感じ始めていました。ドビュッシーもまた年若い頃から反骨精神の強い音楽青年だったようで、学生時分から作曲の教則本に纏められた規則の山に縛られることを嫌い、生涯に亘って自由闊達かつ独創的な作風の楽曲を残しました。
そんな彼がインスピレーションを得た題材のひとつに、日本の浮世絵や蒔絵があります。西洋の伝統とは全く違う感性のもとに創作された日本の美術品に触れた経験から、交響詩《海》などの大規模かつ繊細な表情を持った作品が生み出されました。そして20世紀後半には、ドビュッシーの作品に感化されて作曲の道を志したオリヴィエ・メシアン(1908〜1992)や武満徹(1930〜1996)のような作曲家が新たな世界を切り開いていくこととなります。
今回のコンサートでは彼の歌曲作品を取り上げる予定ですが、日本からヨーロッパ、そしてまた日本へ...そんな「サウンドの循環」に思いを馳せながら耳にすると、知っている作品でも今までと違った印象で聞くことができるかもしれません。
次の記事もぜひお楽しみに!